累進法人税はなぜ馬鹿げているのか

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累進税率について勘違いしている人がいるといけないので最初に解説しておこう。現行の法人税は23%の比例税率となっている*1。つまり所得*2がいくらであれ所得×23%が納税額となる。累進税率は比例税率と異なり、所得が高いほど適用される税率自体が大きくなる仕組みである。現在の個人所得税のように。

 さて法人税に累進税率が導入されたとしよう。所得10億円の企業A、所得6億円の企業B、所得4億円の企業Cがあれば、税率はA、B、Cの順に高くなる。例えば30%、25%、20%のように。あなたはこれを合理的だとか公平だとか思うだろうか。では、実は企業Aと企業B・Cは全く同一の経済活動をしていて、単に企業Aを会社分割によって企業Bと企業Cに分けたのだ、と言ったら?

 また次のような状況を考えよう。所得100億円の企業・甲と所得10億円の企業・乙がある。累進税率により甲には乙よりも高い税率が課される。あなたはこれを問題ないとか正しいとか思うだろうか。では、実は甲の株主はたくさんの小規模な個人投資家と従業員持株会から構成されていると言ったら? さらに、乙は創業者一家によって全株式を保有されている、と言ったら?

 累進法人税という発想は豊かな法人と貧しい法人があると考えその格差を問題にする。だがこのような考えは誤っている。法人はただのハコである。大きなハコの所得が貧しい個人に帰着することもあれば小さなハコの所得が豊かな個人に帰着することもある。あるのは豊かな個人と貧しい個人である。再分配の単位になり得るのは個人であって法人ではない。法人は泣きも笑いもしない。

 ついでにもう一つ言っておこう。都市と地方の再分配という発想にも同じ問題がある。東京にも貧しい人間がおり地方にも豊かな人間がいる。県や市が泣いたり笑ったりするわけではない。それをはき違えると、都市部の中間層や貧しい人々から吸い上げた税金を地方の比較的豊かな人々──例えば国会議員の地元で票田を抱える土建屋──に撒き散らすことになる。

*1:ただし資本金1億円以下の中小法人は例外で所得800万円以下の部分が15%となる

*2:ここでは利益と同義と考えてもらって差し支えない。