たいへんだ!税金で返さなければならない国の借金1000兆円!|GY|note
長くなるがまずは上の記事から引用する。
以上の前提で、財政の健全性、持続可能性を検討するチェックポイントを確認しましょう。
まずチェックすべきは1年間に払った利払い額です。借り換え・借り増しそれ自体には何らの制約もないので、残高自体はみてもしかたありません。それは過去の日本の債務残高の推移をみてもわかると思います。さらに利子率が上昇すると利払い額は増えるので、利払い額は総需要に対して過剰な財政支出をしていないか、過大な借り入れをしていないか否かのチェックポイントになります。
利払い額がどの程度の負担になるかは、同時期に国全体でどの程度の付加価値の算出があったのか、つまりGDPによります。(中略)この対比は感覚的にも理解できるでしょう。同じ年間100万円の利払いでも、年収200万円の人と年収2000万円の人とではまるで負担が違います。200万円の人には生活に破綻をきたすほど過大な負担ですが、2000万円の人ならもっと払っても生活に支障は生じません。
なお債務の残高をGDPと比べる人が多くいます。多い、というより、日本で目にする議論のほぼ100%はそうです。でも元本部分は減らさなくよいのだから、ストック(債務残高)をフロー(GDP)と比較するのはナンセンスです。債務残高が1000兆円だろうが、利払いをじゅうぶんに上回る付加価値を生み出していれば財政は持続可能な反面、債務残高が10兆円だろうが、利払いと比較して十分な付加価値を生み出していなければ財政はいずれ行き詰まります。
上の記事の主張に反し、債務残高対GDP比(債務残高/GDP)はナンセンスではなく、明確な経済的意味を持っている。上の記事は利払い対GDP比(利払い/GDP)が有意味であることは認めているようだから、その前提であれば債務残高対GDP比の意味を説明することは容易い。
利払い=金利(%)×債務残高
だから、
利払い/GDP=金利×(債務残高/GDP)
つまり金利が1%上昇するとき、利払い対GDP比は債務残高対GDP比だけ上昇する。例えばGDPが500兆円で債務残高が500兆円の国では、金利が1%上昇するとき利払い対GDP比は1%しか上昇しないのに対し、GDPが500兆円で債務残高が1000兆円の国では、金利が1%上昇するとき利払い対GDP比は2%上昇する。すなわち債務残高対GDP比の低さ(高さ)は財政の金利上昇に対する頑健性(脆弱性)を表す。
むろん政府債務には長期のものもあり、金利上昇が直ちに政府債務残高すべての利払いに影響を及ぼすわけではない。しかし日本は近年、量的緩和・異次元緩和という名で(中央銀行を含む広義の)政府債務をより短期のものに置き換えるオペレーションを続けてきたのだった。*1
政府財政についての議論が俄かに盛り上がっているのは世界的な金利上昇や物価上昇の兆候を受けてのものだと思うが、「利払いが小さいから債務残高は大きくてもいいのだ」式の金利上昇に対する財政的頑健性への懸念をまるで無視した議論が今更はてなブックマークで少なからぬ賛同を集めるのは僕には理解しかねるところだ。
*1:上の記事では日銀保有の国債の利払いはオフセットして考えるべきだと主張されている。その通りだと思うが、その場合は日銀自身の負債(すなわち日銀当座預金)とその利払いは当然連結して考えなければ論理が一貫しない。この点が考慮された形跡を僕は上の記事に見つけることはできなかった。