日本のGDPシェアが低下して大変だ云々という話がはてブでバズっていた。どうしてGDPそのものじゃなくシェアの方にみんな興味があるのかは謎だ(後者は前者が持っている情報量を無駄に潰しているだけじゃないの?)。
GDPシェアの変化(ポイント)は 、ある国のGDPをY、世界のGDPをアスタリスク付きのYで表すと (どちらもあらかじめドル換算しておく)、
要するに世界全体のGDP成長率よりも日本のGDP成長率が高ければ日本のGDPシェアは拡大し、低ければ縮小する。ふつう先進国のGDP成長率よりも発展途上国のGDP成長率が高いので、発展途上国がキャッチアップしてくる過程で先進国のGDPシェアが縮小するのもふつうである。
右辺の括弧内をソロー分解すると
すなわちある国のGDPシェアの変化は、その国の全要素生産性(Multifactor productivity, A)の成長率、資本投入(Total capital service, K)の成長率、労働投入(Total hours worked, L)の成長率が、全世界におけるそれぞれの成長率をどれだけ上回ったかという3要因に分解できる。
先の理由で途上国含む全世界のGDPと比較してもつまらないので(そして全世界のGDPをソロー分解できるデータもないので)、ここからは全世界のGDPの代わりにG7のGDPを使用し、G7における日本のGDPシェアの変化を分析する。
G7各国におけるGDPシェアの推移はグラフの通りであり*1、日本のシェアは1995年から2017年のあいだに17.1%から13.9%へ3.2ポイント低下している。
上の式を使って日本のGDPシェアの変化を各要因に分解すると次の通り*2。一応解説すると、例えば1995年ならMFPの成長(第一項)と資本投入の成長(第二項)はプラスなのでG7に勝っており、労働投入の成長(第三項)はマイナスなので負けていて、それらのトータルとしてシェアは黄線のポイント分だけ拡大している。
ついでに米国。
そして1995~2017年の増減の合計。左が米国で右が日本。
すなわち最初のグラフで示した日本のGDPシェア3.2ポイントの低下は労働投入の寄与マイナス2.4ポイントで7~8割方説明可能で、残りはMFPの寄与プラス0.2ポイント、資本投入の寄与マイナス1.0ポイントによって説明される。
日本の生産性は低いといわれがちだが、実はここ20年のMFP成長率に関する限りG7平均には打ち勝っていることが分かる。*3問題の大部分は労働投入の減少で、これが少子高齢化の反映かどうかは別途考察を要するが、きりがいいので別の機会にしよう。