というか、JR北海道は”民営”なのか?

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 ある人はいう、JR北海道の民営化は失敗だったと。また別の人はいう、JR北海道の民営化は間違っていなかったと。僕に言わせてもらえば、こんなものは擬似問題だ。だって、JR北海道は公営なんだから。

 民営化の定義を争うつもりはないので次の事実を知ってほしい。JR東海、JR東日本、JR西日本はいずれも金融機関や個人などを株主とする上場企業だ。一方、JR北海道は株式の100%を鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)に保有されている。

 JRTTというのは国交相所管の独立行政法人で、政府が100%出資している。結局のところ政府はJRTTを通してJR北海道の株式を100%保有していることになる。JR北海道は政府の完全子会社なのだ。

 JR北海道の経営者は株主総会によって選任されるけど、株主はJRTTだけだから、国交省はJRTTを通して社長人事も思うがままだ。実際、国会議事録を見ると、国土交通大臣がJR北海道社長の事実上の任命権者であることが分かる場面がある。

 ついでにいうと、JR北海道の借入金は大部分がJRTTからの借入金で、JRTTの借入金は大部分が財政投融資だ。国の100%出資で、国に人事を握られ、国から金を借りている民営化って何だ?

 実際のところJR北海道は民営化していないのであって、JR北海道の赤字も公営企業が赤字を垂れ流し続けているというありふれた話でしかない。もちろん、ありふれたことだから許せなんていうつもりで言ってるわけじゃない。

 こんなものを民営化なんて呼ぶべきじゃなかったのだ。JR北海道という公営企業の失敗が『民営化』の失敗にされ、企業の規制や公営化を求める口実にされてしまえば、喜ぶのは権力を強めたい政治家や官僚だ。

  それでも僕は、JR北海道の『民営化』をちょっとばかりは評価している。JRTTが独立行政法人として、JR北海道が株式会社として切り出されたおかげで、赤字の実態や国からの金の流れが見えやすくはなったからだ。見えないところでひっそりと税金が注ぎ込まれるよりはましだと思いたい。

おまけ

 分割して民営化したのが間違いだった、という話もあるようだ。でもこれは本質的じゃない。JR東日本とJR北海道を統合したとして(その運営主体が国か民間かはここではどうでもいい)、旧JR東日本の黒字を旧JR北海道につぎ込めば旧JR北海道の赤字は消えるかもしれない。けど旧JR北海道を廃線にすれば旧JR東日本の黒字を他のことに使えるのに、なぜ旧JR北海道の路線の救済に使わなきゃならないんだ? という形で同じ問いが再浮上してしまう。