GONZOの会計不正が今更ながら一部で話題になっていた。複数の不正の手法が用いられているものの、アニメ会社で発生した事例という観点からは製作委員会方式を利用した点が注目される。
製作委員会方式の場合、アニメ制作会社や広告代理店など複数の関係者が出資をして製作委員会というハコを作る。製作員会はアニメを製作・制作し、そのコンテンツ利用から得られた収益をそれぞれの出資者に分配する。
とはいえ製作委員会はただのハコであって現実にアニメを制作するための手足を持たない。製作委員会は実際のアニメ制作を制作会社に外注する。GONZOは製作委員会に対して出資者であり、アニメ制作の受注者でもある。
GONZOが制作委員会に出資した際には次の仕訳が切られる。
出資金/現預金
なお出資金は資産項目である。株や有価証券と同じように考えれば良い。製作委員会にアニメを納品した際には次の仕訳が切られる。
現預金/売上
しかしこれはおかしい。二つ目の仕訳でGONZOが製作委員会から受領した現預金の少なくとも一部は一つ目の仕訳でGONZOが製作委員会に支払ったものである。すると計上された売上にはGONZOが自分で自分に支払った分が含まれている。これは売上から控除されなければならない。
要するにこれは古くは子会社を使って行われていた典型的な不正スキームと同じである。子会社と親会社の間で資金を還流させ、親会社に戻ってきた資金を親会社の売上にしてしまう。
連結会計が導入されてからはこのような不正を行う意味は薄れてしまった。製作委員会も任意組合であるから連結の対象になり得るが、今回のケースでは出資比率や議決権比率の関係で必ずしも連結の対象にならなかったと考えられる。
もっともGONZOは自らが製作委員会の幹事会社となり出資に関する仕訳を省略した場合でもわざわざ
コンテンツ資産/売上
という仕訳を切っていたようであるから、連結したところで不正の抑止にはならなかったかもしれない。明らかに未実現利益であり、不正としてはお粗末である。