農地の宅地化を防ぐことはどのように官製カルテルなのか

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農林水産省と国土交通省は、都市部の農地「生産緑地」を維持するための対策に乗り出す。地主の相続税を猶予したり、硬直的な土地の貸し借りの仕組みを柔軟にしたりして、企業やNPOが借りやすくする。*1

農業をするよりも住宅を建てた方が儲かると判断されたとき、その土地は宅地化される。なぜ住宅の方が儲かるのかといえば、農産物より居住サービスの方が高く売れるからだ。

 つまり、消費者が居住サービスをより強く求めるからこそ農地は宅地化される。これを妨害する政策が僕らを豊かにすることはない。その政策は限られた土地を、より求められていない商品の生産に振り向けるのだから。

営農をあきらめる人が増えれば、一気に宅地化が進む可能性がある。住宅価格の急落など、「2022年問題」として懸念する声がある。

かつて自動車は庶民には手が届かなかった。フォードが大量生産をはじめると自動車の価格は下落し、庶民でも自動車が買えるようになった。いうまでもなく、これは良いことだ。

 宅地が増えることで住宅価格が下落するのも同じことだ。より多くの住宅が供給され、そのことによって、より貧しい人でも住宅が買えるようになる。あるいは安く家が借りられる。いうまでもなく、これも良いことだ。

 いや例えば、借家の貸主は家賃が下がって損するじゃないか、という意見があるかもしれない。僕もそう思う。おそらくフォードの大量生産の成功によって値下げを余儀なくされたライバル社があったように。

 宅地への転用を封じることで住宅価格を維持するのは、かつての自動車業界でフォードの参入を阻止し、自動車価格を維持しようとするのに似ている。それはこれから住宅を買う貧しい人々を犠牲に既得権を守る官製カルテルだ。

*1:後半の「硬直的な土地の貸し借りの仕組みを柔軟に」するというようなことについては、僕は原則的に賛成だ。貸手と借手が互いに納得した条件を行政が禁じるべき場合は例外的だからだ。