多重課税のこと

商品を仕入れて販売している単純な会社で、海外との取引がなく、借入れもなく、在庫を持たず、従業員もいない。この会社が支払う法人税は(売上ー仕入)×法人税率となり、消費税は(売上ー仕入)×消費税率となる。このような単純な会社のみから成る世界では法人税と消費税の区別は消滅する。

 同じ課税ベースに同じ仕方で賦課され、納税義務者も等しいのだから、税収の総額を変えないように税率を変化させたとしても、税負担の帰着を変化させることはできない。法人税だから会社に負担が帰着するというわけではなく、消費税だから消費者に負担が帰着するというわけではない。*1

 ここで消費税と法人税をともに課すことは多重課税といえるだろうか? 多重課税といえるとして、何か実際上問題があるだろうか? 税務コストはゼロではないはずだから、これらの税を統合することで社会全体からコストを削減することはできるだろう。*2

*1:法人税と消費税が決定的に異なる点は法人所得か消費かということよりも海外取引の扱いにある。冒頭で海外との取引がないことを仮定したのはこのためである。法人税の引き上げが企業の海外移転を誘発するのも、課税ベースが企業所得だからというより、法人税が源泉地主義だからだと考えられる。

*2:現実の世界でも法人税を仕向地主義に転換すれば法人税と消費税の一本化の可能性が見えてくる。これは大真面目に検討されるべきことだと僕は思う。