特定の投資を税制上優遇することが生産性を下げるのはなぜか

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政府は22日、安倍政権の新たな看板政策「人づくり革命」を進めるため、人材投資を行った企業に対し法人税を減税する制度を設ける方向で検討に入った。企業の生産性向上を税制面から後押しするのが狙い。

投資Aと投資Bがある。今回の文脈では投資Aは普通の設備投資、投資Bは人材投資と考えてもらえばいい。いずれの投資金額も5億円で、見込まれる収益は投資Aなら8億円、投資Bなら7.8億円としよう。

 銀行に出せる担保の制約から、この企業はどちらかの投資しか実行できない。とすれば当然投資Aが実行されるべきだけど、投資Bの場合だけ0.3億円の減税が行われるとしたら、企業は投資Bを実行する。

 この減税によって企業の利益は3億円から3.1億円に増える。でもそれは政府から企業に0.3億円の所得移転が行われたからで、世の中全体で見れば生み出される価値は3億円から2.8億円に減っている。

 つまり、ある種類の投資だけを税制上優遇すれば、生産性は低下する。これは必然的なことだ。その税制が喚起する投資は、優遇がなければ実施されないような生産性の低い投資だったのだから。