外国人株主の増加は国富の流出を意味するか?

 コラム:国外へ流出する日本企業の「富」=村田雅志氏 | ロイター

日本の個人投資家は、今年4―6月期に2.0兆円の日本株(現物)を売り越しているのに対し、外国人投資家は1.7兆円ほど買い越している。これは、日本企業が純資産を積み上げるなか、日本の個人投資家は日本企業の所有権(オーナーシップ)を手放し、外国人投資家が所有権を増やしていることに他ならず、増加する日本企業の純資産(富)が、国外に流出する事態につながりかねない。

 タイトルに対する答えだけど、もちろんノーだ。

 なぜかっていうと、日本人投資家が日本企業の株式を外国人投資家に売却するとき、まったく当然だけど、その対価を受け取っているから。1000円の株を売って1000円のキャッシュを受け取る。それは損じゃない。

 その対価をキャッシュのまま持つのか、債権を持つのか、あるいは不動産を買うのかは知らないけど、株式が他の資産に置き換わっただけで、売り主が何か損をしているわけじゃなく、何か国富と呼ぶべきものの流出もない。

 でも企業の純資産が増えているのに、それを国外に手放しちゃうのはやっぱり国富の流出なんじゃないか? いや、ノーだ。企業の業績がいいなんてことはみんな分かっているんだから、売る方の投資家だってそれ込みの値段で売っている。

 もちろん売ったあとで、思った以上に株が値上がりしたり、値下がりしたりすることはある。やっぱり売るんじゃなかったとか、もっと売っておけばよかったとか思うことはあるに決まっている。

 けどそれは後知恵で、売買の時点では、売り手も買い手も今がベストタイミングだと思ったから取引したわけだ。それはどこの国の投資家も一緒で、日本人だけ一方的に損するとか、外国人だけ一方的に得するような仕組みはない。

 冒頭の記事は政府関係機関による日本株の買い増しを推奨している。日本人投資家が日本株を売っている、日本企業の純資産は増えているのに、だから政府が国富の流出を阻止するんだ!

 こんな話が成り立たないことはもうお分かりだと思う。投資家はいつだって自分の信じるベストタイミングで売買し、きっちり対価を受け取っている。流出する国富がないのだから、それを阻止するなんて大義名分が成り立ちはしない。