マーケットは従業員を差別する企業からどのように罰金を徴収するのか

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Googleの対応の是非はセンシティブな問題だ。まず何をもって差別と考えるのか、ということがある。とはいえ企業内で起こったことなのだし、仕事と関係のないことで待遇を変えるのが差別だ、と考えるのが素直じゃないだろうか。

 この点だけ同意してもらえるなら、あとの議論は難しくない。結論を先に示そう。僕らの社会は、従業員の発言は自由にさせておけばいいし、企業がその従業員を解雇するのも自由にさせておけばいい。*1なぜか?

 Googleが従業員を解雇したことが仕事と無関係じゃなかったとする。たとえばその従業員の発言がチームの和を乱したり、こんな同僚とは働けないという他の従業員がライバル企業に移るおそれがあったりするかもしれない。

 そうなら、この従業員を解雇することはGoogleの業績を下げないか、むしろ改善するはずだ。この場合、この従業員を解雇することは差別的でないし、Google自身も損をしない。

 一方、Googleが従業員を解雇したことが仕事と無関係だったとする。従業員の発言が単に経営者のカンに触っただけで、Googleの企業としてのパフォーマンスになんら影響しないような場合だ。

 この場合Googleは、仕事と無関係な理由で(おそらくは)優秀な従業員を失い、自社の業績を下げてしまう。おまけに目聡いライバル企業が、その優秀な従業員を雇い入れるだろう。

 つまり仕事と関係のない理由で従業員を選ぶ企業は、それだけ従業員を雇う機会を失うので、そうでない企業に対して不利な条件で競争することになる。これによる逸失利益が差別的な企業への、いわば罰金になる。

 だから企業が利益を追及する限り、企業内の差別は解消するほうに向かう。しかも、仕事と無関係かどうかはマーケットが判断してくれるので恣意性もない。自由なマーケットでは、自らの利益を損なうことなしに誰かを差別することはできない。*2

*1:もちろん企業と従業員のあいだで事前の取り決めがあれば、双方それに従うべきだ。

*2:労働市場の流動性が失われているような場合には差別が存続するおそれはある。「目聡いライバル企業」に移動できないからだ。