「内需依存」の危うさ

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戦後の日本は貿易立国でも何でもなく、むしろ一貫して内需依存型です。

 だから貿易によって日本が豊かになったというのは誤りで、貿易を政策的に制限しても経済に悪い影響はない、と上の記事の評論家は言いたいみたいだ。

 日本が内需主導で成長した、というのは全くの間違いじゃない。けれど、だから貿易を制限しても構わない、というのは本当だろうか。

 X国は砂漠の国で、もっぱら石油を生産している。X国のある年の石油の生産金額は100億ドルだ。X国はこれを全て輸出し100億ドルを手に入れる。そしてその100億ドル全てを外国に支払って食べ物、衣服などを輸入し、消費する。

 X国のGDP統計は次のようになる。

  • X国のGDPは消費+輸出ー輸入=100億ドル
  • X国の内需は消費=100億ドル
  • X国の外需は輸出ー輸入=0億ドル

 GDPの支出面で考える限り、X国の経済は100%内需依存型ということになる。だからといってX国が鎖国するなら、X国の経済に破滅的なダメージがもたらされることは疑いない。

 外需がGDPに寄与しなければ貿易する意味がない、という見解は、貿易の目的は純輸出(貿易黒字)の拡大にある、という誤った思想に基づいている。貿易の本当の目的は外国と商品を交換することにある。石油と食べ物を交換すること自体がX国に豊かな生活をもたらすのであり、その結果として収支が黒字である必要はない。

 交換が赤字も黒字もなくトントンの収支で終われば、統計の見かけ上、僕らの経済は「内需依存型」になる。それを見て貿易は無意味だと解釈する誤りを犯せば、僕らの経済は江戸時代に戻っていってしまうだろう。