お金の回転 花見酒の経済

note.mu

コップ10杯分のお酒がある。はじめAがBに千円札を渡して一杯飲む。その同じ千円札をBがAに渡して一杯飲む。取引されたお金の総額は千円×10=10千円だ。

 では、コップ半杯ごとに千円札を渡した場合は? 千円×20=20千円だ。別のケースとして、千円札ではなく1万円札を渡した場合はどうだろう? 1万円×10=10万円だ。

 上にリンクを張った漫画の結論の妥当性はここでは論じない。ただ僕が今日言いたいのは、お金が回るのが良いというのは、決して自明ではないということだ。貨幣の流通速度が上昇した場合も、貨幣の額面が増えた場合も、いずれも回るお金の総額は増える。でも花見酒の経済は、彼らが飲むことのできるお酒の量が増えるとき、そのときにだけ豊かになる。

 だから、お金が回れば経済が良くなるという話からは、控えめに言っても大事な議論が省略されてしまっている。取引されるお金が増える結果として、僕らの消費できる財やサービスがどのように増えるのか、あるいは増えないのか? そこを議論しなければ僕らの言葉はレトリックになり、経済学の繊細なロジックのすべては失われてしまう。