貿易、生産性、雇用

www3.nhk.or.jp

生産性の上昇は良いことだ。今まで1日かかっていた仕事が半日でできるようになる。そうしたら僕らは残りの半日を、余暇に使ってもいいし、もっと働くために使ってもいい。

 このことに同意してもらえるなら、海外から安い商品を輸入するのが良いことだというのにも同意してもらえるはずだ。丸一日分の給料でようやく買えた商品が、半日分の給料で買えるようになる。そうしたら僕らは残りの半日を、余暇に使ってもいいし、もっと働くために使ってもいい。

 逆に考えてみるのもいいだろう。雇用を増やしたいなら、半日働けば中国から買える商品を、わざわざ自国で1日かけて生産すれば良い。生産性を下げれば雇用は増える。1個の電球を交換するために3人のポーランド人を雇えば雇用は増えるのだ。

 注意すべきことがあるとすれば、貿易の恩恵は全ての人々に一様にもたらされるのではないということだ。輸入品に置き換わる仕事もあれば、そうでない仕事もある。前者の仕事に従事する人々は後者の仕事に従事する人々より、少なくとも短い目で見れば、相対的に貧しくなるだろう。

 でも、相対的に、という点には気をつけてほしい。海外から様々な商品が十分安く買えるようになれば、所得が下がった人でも、実質的には以前よりも豊かな暮らしを享受し得る。

 僕らは何度も輸入品に仕事を奪われてきた。それは良いことだ。中国が安く家電を売ってくれるおかげで、僕らは例えば、研究開発やエンターテインメントにより多くの資源を投入することができる。輸入品が僕らの仕事を奪わなければ、僕らは今でも、江戸時代とそう変わらない暮らしをしていたに違いない。