ヤマダポイントはなぜ負債なのか

ヤマダ電機のポイントが文字通りの意味で借金であるかといえばそうではない。ヤマダ電機は僕らのポイントに利子を払わないし、元本が償還される満期もない。じゃあヤマダ電機がもし、すべての資金をヤマダポイントで調達したら? ヤマダ電機は無借金経営ができることになるだろうか。

 そうかもしれない。でもそんなことは些細なことだ。大事なのはカネとモノの流れを丁寧に追いかけることで、それを最後に借金と呼ぶかは自由にすればいい。

 僕がヤマダ電機に10万円を払って、冷蔵庫と2万ポイントを受け取る。これは二つの取引に分解できる。

 ヤマダ電機は8万円で冷蔵庫を売ったのだが、それとは別に2万円を余計に手にしているわけだ。*1じゃあヤマダ電機は2万円タダで儲けたのか? もちろん、そんな手品はない。だって発行した2万ポイントは、後々ヤマダ電機に返ってくるのだから。僕が次にヤマダ電機に行くとき、その2万ポイントを使う。そのときヤマダ電機は、自身にとっては何の価値もないヤマダポイント*2と引き換えに、2万円分の商品を僕に引き渡さざるをえない。

 そしてまた、このようにポイントと商品を引き換えることができるからこそ、はじめに冷蔵庫を買うとき、2万円を余計に払うことに僕は応じた。つまりヤマダポイントは、それがヤマダ電機に還流する可能性を前提することによってはじめて、誰かに受け取ってもらうことができる。

 これが、ヤマダポイントが負債だということの意味だ。ヤマダポイントには満期がないが、僕が店舗にポイントカードを持ち込めば、それはいつでも償還される。またあらゆる借金がそうであるように、ポイントによる資金調達を維持するには、それに見合う資産がヤマダ電機に維持されなければならない。ポイントによって引き換えられる商品が店舗になければ、僕はヤマダポイントの受け取りを拒否して、ヨドバシかAmazonに向かうだろう。

*1:この数値例では利子は生じていない。利子があるケースは、たとえば冷蔵庫の価値が9万円だった場合を考えればいい。僕は2万ポイントを1万円で購入したことになり、ここに利子が生じている。キャッシュで値引きをする他店に対抗するためにはポイントの付与率を高くせざるをえない。だから、ポイントに利子はつかないのだが、実ははじめから利子分は払われている。

*2:ヤマダ電機が自分で自分にヤマダポイントを使っても、家電はヤマダ電機の店頭から動かない。ヤマダ電機が自己保有するヤマダポイントを再び誰かに付与することはできるが、それはヤマダ電機が新たにポイントを発行したのと変わらない。自己保有ヤマダポイントなるものがあるとしても、実質としてはヤマダポイントはヤマダ電機に還流するたび必ず消滅し、付与されるときには必ず新しく発行されることになる。