限界効用は必然的に逓減する

限界効用逓減法則について、こんな説明がされることがある。
 水を一杯飲むと美味しい。二杯目は少し飽きる。三杯目はもっと飽きる……。
 この説明は誤解を生みやすい。限界効用逓減法則が、何か心理学的な経験則に依存しているかのような印象を与えるからだ。このあたりの誤解が、経済学を胡散臭いと人々に思わせる原因のひとつになっているのだろう。飽きっぽくない人だっているはずだ、と。でも実際のところ、限界効用逓減法則は心理学による裏付けを必要としない。
 より誤解のない説明は次のようなものだ。四杯の水がある。一杯目はぎりぎり生命を維持するために飲む。二杯目は健康を維持するために飲む。三杯目は歯磨きに使う。四杯目は花に水をやるのに使う。
 四杯目の水より一杯目の水のほうが、この消費者により高い満足を与えたことは明らかだ。だからこそ、この消費者は、一杯目の水を飲んだ。
 人間は限られた資源を使って、より緊急度の高い目的から順に充足する。そのため限界効用は必然的に逓減する。もちろん、この消費者が一杯目の水を花にやったとしても限界効用逓減法則に反しない。その場合は、彼にとって、自らの生命よりも花のほうが大事だったというほかないからだ。